世界中で頻発する手袋トラブル
~ゴム製手袋による健康被害~
一般的に「ゴム手袋」と呼ばれる天然ゴムやニトリルゴム(合成ゴム)製の手袋。医療、理・美容業、食品加工など、仕事上、手袋を使用しなければならない人々をはじめ、家庭での水仕事や庭仕事の際に利用する人は多いでしょう。手荒れを防いだり、汚染を防止するために使用するこの手袋が原因で、かえって皮膚トラブルに見舞われてしまうケースがあることをご存知ですか? 日常的に手袋の着用を求められる人々にとって、アレルギーや接触性皮膚炎など、手袋による健康被害は大きな問題となっています。
天然ゴム、ニトリルゴム製の手袋で皮膚に湿疹や手荒れが起こる場合、その原因はいくつか考えられますが、大きく2つに分けられます。
●一次刺激性接触性皮膚炎(ICD)
原因となる物質との接触によって、皮膚の炎症が誘発される皮膚炎で、アレルギーとは無関係のため誰にでも起こりうる症状です。手袋内の汗や湿気、植毛されたパイルとの物理的刺激、手袋加工薬剤などが原因とされています。
●アレルギー性接触性皮膚炎(ACD)
原因物質(アレルゲン)に触れて皮膚の炎症細胞が感作されると、再度その原因物質に接触することで炎症細胞が活発に働いてしまう症状。
アレルギーのある人だけが発症し、原因物質の毒性の強さと症状の強さには相関関係がないといわれています。
手袋のアレルゲンとしては、ゴムの弾性を増加させる加硫促進剤をはじめ、可塑剤、熱安定剤などの化学物質やラテックスタンパク質が考えられます。
また、塩化ビニル樹脂製の手袋でも添加剤は使われているため、アレルギー性接触性皮膚炎が起こることもあります。
米国・コロラド州に拠点を置く非営利団体「AORN(米国周術期看護師協会)」の年次総会(2010年)で実施された調査によると、「天然ゴム製手袋から、合成ゴム(ラテックスフリー)製の手袋に変更した後でもアレルギー被害が継続している」と回答した人が50%を超えています。
この結果は、天然、合成ともに製造工程で使われる加硫促進剤などの化学物質がアレルゲンとなっている可能性が高いことを示唆しています。
※ラテックスアレルギー
ラテックスタンパク質が含まれる天然ゴム製品に触れることで起こる皮膚炎、アナフィラキシーショック、ぜんそく発作などの即時型アレルギー反応のこと。1979年に初めて医学雑誌で報告され、近年、院内感染予防等で医療従事者のゴム手袋の使用頻度が高まったため、急速に罹患率が上昇しました。
一方、手袋の製造技術改善や代替品の開発、ラテックスアレルギーに関する教育などによって、医療従事者のラテックスアレルギーの発症率は低下しつつあるとの報告もあります。
また、ラテックスアレルゲンに感作されると、バナナ、アボカド、キウィ、ナッツなど特定の食物に含まれるタンパク質と交叉抗原性を示すことがあり、それらの食品を食べた時にアレルギー症状が発現する場合もあります。
これは「ラテックス・フルーツ症候群」と呼ばれ、ラテックスアレルギーとともに、問題となっているアレルギー症状です。